日本人は働きすぎだなんてよく言われます。
確かに過重労働で、心身の健康を崩す人が増えていることは、長年の社会問題です。
でも、実は私はずっとモヤモヤしていることがあります。
それは私自身は、単に労働時間だけで見れば、決して働きすぎではなかったからです。それでも、私は体を壊してサラリーマンを辞めざるを得ませんでした。
そのせいで、”自分は根性が無かったのかな?”とか”自分は社会人としては、低レベルなのかな?”と心のどこかで思っていました。
でも、労働時間が短いのに、体を壊す人が多いのは、私だけじゃなかったんです。
当時私が勤めていた会社は、日本でも有数の強力な労働組合がある会社でした。組合員の残業時間を短くするために、強い影響力を持っていたため、全体的にも労働時間は短かったです。
それでも辞めたり、長期休暇する人たちの半分近くは健康上の理由でした。
少なくとも自分の身の回りでは、労働時間が短いはずなのに、体を壊す人が多いのです。
果たして、日本人は本当に働きすぎなんでしょうか?
とうわけで、今回は、日本人が働きすぎとされる原因を考えてみたいと思います。
目次
労働時間の世界ランキング
まずは実際に世界と比べて、日本人の労働時間がどれくらいの長さなのかを見てみましょう。
下の表は経済協力開発機構(OECD)加盟国を中心とした35ヵ国の平均年間労働時間を、長い順に表にしたものです。
順位 | 国名 | 1年間の労働時間(時間) |
---|---|---|
1 | メキシコ | 2,226 |
2 | 韓国 | 2,163 |
3 | ギリシャ | 2,034 |
4 | チリ | 2,029 |
5 | ロシア | 1,982 |
6 | ポーランド | 1,929 |
7 | イスラエル | 1,928 |
8 | エストニア | 1,889 |
9 | ハンガリー | 1,886 |
10 | トルコ | 1,855 |
11 | アメリカ | 1,790 |
12 | スロバキア | 1,785 |
13 | チェコ | 1,784 |
14 | イタリア | 1,752 |
15 | 日本 | 1,745 |
16 | ニュージーランド | 1,739 |
世界平均 | 1,725 | |
17 | カナダ | 1,711 |
18 | アイスランド | 1,706 |
19 | ポルトガル | 1,691 |
20 | オーストラリア | 1,685 |
21 | フィンランド | 1,679 |
22 | スペイン | 1,666 |
23 | イギリス | 1,654 |
24 | スウェーデン | 1,621 |
25 | スイス | 1,619 |
26 | オーストリア | 1,576 |
27 | ベルギー | 1,572 |
28 | スロベニア | 1,537 |
29 | アイルランド | 1,529 |
30 | ルクセンブルク | 1,509 |
31 | フランス | 1,479 |
32 | デンマーク | 1,430 |
33 | ノルウェー | 1,418 |
34 | ドイツ | 1,393 |
35 | オランダ | 1,384 |
※国際統計格付センター、世界・平均年間労働時間ランキングより
あくまでもこの35ヵ国の中だけのランキングですが、日本は全体の15位です。
労働時間の長さで見てみると、35ヵ国の平均年間労働時間の1,725時間を、僅か20時間だけ上回るだけです。
つまり、ほぼ平均レベルの労働時間でしかないのです。
やっぱり私が感じてる通り、単なる労働時間だけで見れば、特別長いわけではないのです。
しかし、日本人は自他共に”働きすぎの民族”と見られているわけです。
いったいそれはなぜなんでしょうか?
次はその理由を考えてみましょう。
働きすぎと感じる理由
なぜ、”働きすぎ”と感じるのか?
その理由を調べたり、自分でも考えてみた中で、面白いデータを見つけました。
日本人に仕事のストレスについての質問をしたところ、次のような結果になったそうです。
- 「仕事でストレスを感じるか?」に”いつもある”、”よくある”と答えた人の割合
- 「経営者と従業員の関係はどうか?」に”非常に良い”、”まぁ良い”と答えた人の割合
- 「この5年間に何らかのハラスメントを受けたか?」に”ある”と答えた人の割合
⇒ 男性が全体の50%(世界2位)、女性が全体の46%(世界4位)
⇒ 男性が全体の54%(世界ワースト2位)、女性が全体の46%(世界ワースト4位)
⇒ 男性が全体の20%(世界3位)、女性が全体の33%(世界2位)
※NHK文研ブログ、仕事のストレスが多い日本人より
ここから分かるのは、日本人労働者が感じているストレスは、世界でもトップクラスだということです。
一言で”働きすぎ”と言っても、それは単なる労働時間の長さを指しているのではなく、“強いストレスを感じながら働く時間”が長いというのが実態なわけです。
では、なぜそんなにストレスが大きいのでしょうか?
その理由には、次のような他国には無い、労働文化や経済状況があるのかもしれません。
- 過剰サービス
- 全体主義的
- 経済競争の激化
それぞれがどのようにストレスに影響するか、順番に考えてみます。
過剰サービス
日本の特徴的な文化に”お客様は神様!”というものがあります。
顧客を第一にして、その期待に応えるために最大限のサービスを提供します。時には無理難題や過剰な要求にも応えるために、無理な努力をします。
また、客の立場になった時にも、”自分は最大のサービスを受ける権利がある!”という態度になりがちです。そのため、無意識のうちに過剰な期待や横柄な態度で、サービスを要求してしまう傾向があります。
過剰サービスを提供すれば、顧客もそれを当然として、更なる過剰サービスを要求します。そして、またそれに応えるという悪循環に陥り、サービスを提供する側のストレスが増加していくのです。
全体主義的
一般的に欧米は”個人主義的”で、自分自身の利益を優先する考え方だと言われています。
その一方で、日本人は良くも悪くも和を大切にする”全体主義的”な傾向があります。
“全体主義的”というと大袈裟ですが、例えばこのような考え方です。
- 周りが頑張っているから自分も頑張る
- 自分がミスすると迷惑がかかるから
- チームのために努力する
ブラック企業であれば、これを社員に強要する所もあるかもしれません。
日本人の非常に良い点でもあるのですが、自分のやりたい事や時間を犠牲にし続ければ、当然ストレスに繋がります。
このような過度に他人や組織を優先させることも、ストレスの原因になるでしょう。
経済競争の激化
現在の日本は、高度経済成長期を過ぎて、経済成長は停滞し、企業の業績も昔のような勢いが無くなってきています。
しかし、相変わらず売り上げや株価を上げることを目標に、経営を続けています。
今や世界中の企業がライバルの中で、業績を上げるのは至難の業です。それでも、高い目標を掲げて、企業活動を続けています。
そうなると、そのしわ寄せは、社員に来てしまいます。更に無理な働き方が必要となり、ストレスも増えるばかりです。
日本は経済大国として、一度は頂点を極めた国です。
そのような国が生活レベルを落とすのは、難しいでしょう。
経済的に既に高いレベルに到達した国は、そこにとどまろうとするだけでも、とても大変なことです。
このような世界の経済情勢も大きな理由の一つかもしれません。
まとめ
今回は日本人は本当に働き過ぎなのかということを見てきました。
こうして見てみると、日本人は働きすぎというよりも、とてもストレスが大きい環境で働いているという方が近いかもしれません。
もう一度、この記事の内容を簡単にまとめておきます。
- 日本の労働時間の長さは、世界的と比べると平均レベル
- 日本の仕事の文化は、労働者がストレスを感じやすい
- 一度、経済で頂点を極めた日本が、それを維持するのは、他国よりも遥かに大変
労働時間の長さは、世界と比較しても、普通レベルの数字です。しかし、日本特有の文化などせいで、とてもストレスが大きい労働環境ではないかと思います。
この記事に書いている通り、私自信は長時間労働どころか、むしろほとんど残業をしない生活をしていました。
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それでも、体を壊してしまうくらい、日本で働くことは、ストレスフルなのだと思います。
日本の働き方の質は、心身への負担がとても大きいものです。
もし、自分は大して頑張ってないのに、心や体の調子が良くないなんていう人がいたとしたら…。それは、あなたが悪いのではなくて、どうしようもなく大変な仕事だからかもしれません。
自分を責める必要は無いので、無理だと感じたら、休むことも考えてくださいね!