現代の日本は東京圏が経済の中心です。しかし、この東京圏への一極集中が様々な問題を起こしています。
最も深刻なのは、出生率低下による人口減少です。この問題を表す言葉で、最近よく耳にするのが「東京は人口のブラックホールだ!」というものです。
最新の統計によると、現在(2016年10月)の日本の人口は、約1億2600万人です。そのうちの約28%が東京圏と呼ばれる、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県に住んでいます。そして、問題なのはこの4都県以外で人口が増えているのは、沖縄県、愛知県、福岡県だけで、それ以外の道府県では全て人口が減っているのです。
⇒ ※参考 人口推計(平成28年10月1日現在)
一方で、全国の平均出生率は1.45なのに対し、東京の出生率は1.17と全国でもダントツの低さです。ここから分かるのは、東京は全国から人を集めて人口を増やしているだけということです。
日本はなぜこのような状況なのでしょうか?
私は37年間、東京で生活してきましたが、つい先日、宮城県仙台市に引っ越してきました。こうして、仙台に引っ越すまでの経緯や、実際の仙台の住みやすさを考えると、もっと早く東京を出れば良かったと思います。
現在、東京圏に住んでいる人の中には、地方に住みたいと考えている人も多いのではないでしょうか?
私だけではなく、東京圏で生活している人の中には、好き好んで東京圏に生活しているわけではなく、本当は東京を出ていきたい人も多いはずです。
この状況を変えるには、どうしたら良いのでしょうか?
私は実際に何とかブラックホールを抜け出すことができました。そして、そのためにどんな苦労があったかを振り返ってみて、色々と対策を考えてみました。
そこで、ここでは東京が人口のブラックホールである理由と、それに対する対策を考えてみたいと思います。
目次
東京圏に人口が集中する理由
そもそも、東京に人口が集中する理由はなんなのでしょうか?
東京圏が経済の中心だからと一言でまとめてしまう場合が多いのですが、まずはその理由が明らかにならなければ、対策も考えられないですよね。
また、実際に地方に移住してみて、その過程で感じるのは、東京が人口のブラックホールになる理由には、東京に人が集まることと、東京から出られなくなることの2つの側面があると感じました。
そこで、まずは東京圏に人が集まる理由と、出られなくなる理由を見ていきます。
東京圏に人が集まる理由
東京に人が集まってしまう理由にはどのようなものがあるのでしょうか?
東京に移住する人の中で多いのは、就職などをきっかけにした若者たちでしょう。
そこで、若者が東京に出てくる理由を調べてみると次の3つの理由に分類できることが分かりました。
- 就職しやすい
- 様々な施設や情報がある
- 憧れ
それぞれ、具体的にはどんな内容なのでしょうか?
それぞれを順番に見ていきましょう!
就職しやすい
まずは何と言っても就職のしやすさがあります。
東京は日本経済の中心地です。様々な企業が集中していて、求人数も多く、平均賃金も日本一高い場所です。
その一方で、地方経済は衰退していっています。当然、求人数も少なく、平均賃金も低くなります。
これに対処するために、政府は地方経済を盛り上げるための様々な施策を実施していますが、なかなか効果が出てないのが現状です。
様々な施設や情報がある
東京には様々なアミューズメント施設やショッピングモールなどが存在します。
東京ディズニーランドや六本木ヒルズ、東京スカイツリーなどの様々な施設がありますし、渋谷、原宿、銀座などの日本有数の繁華街もあります。
いつもテレビや雑誌に載っている様々な物が東京にあるわけです。
また、それだけでなく、東京には世界中のあらゆる情報が集まっていて、常に刺激に溢れています。
そのような街に住むことは、とても楽しくて充実感を感じるものです。
憧れ
東京に住むことの憧れも理由の一つです。
例えばこのようなものです。
- 一生に一度は東京に住みたい
- 東京暮らしはカッコいい
- 便利な生活がしたい
他にも色々な”憧れ“があるでしょうが、こういう感情も大きな理由のようです。
私は物心ついた時から東京で暮らしていたので、東京よりもむしろ地方に”憧れ”を感じていましたが、地方から出てきた友人に聞くとこの理由を上げるが結構多いことに驚きました
こうして、それぞれの理由を見てみると、若者が東京に集まってしまう事は、自然に感じてしまいます。
就職が難しいのに、東京に行くのを止めることができるでしょうか?
エネルギーがあって、刺激を求めている若者を、刺激を感じない場所に留めておこうとするのは酷ではないでしょうか?
地方に雇用を増やそうとしても、既に日本経済はこれ以上の成長が難しくなってきています。
私は「東京は人口のブラックホール」というのは、よく言ったものだなぁと思います。色々考えてみると、どうも問題の本質は東京圏に人が集まってしまう事よりも、出られなくなってしまう事のように思えるからです。
では、次は出られなくなる方の理由を見ていきましょう。
東京圏から人が出られない理由
私は東京を出て地方移住するのが長年の夢でした。
でも、”夢”って言った場合、普通は簡単には実現できない大きなものを差しますよね?
しかし、実際にやってみたら、たかが地方都市への引っ越しが”夢”と言わざるを得ないくらい、東京から出るのは大変な事でした。
私だけでなく、東京圏から出たくても出られない人の理由は、この3つが多いようです。
- 転職が困難
- 生活レベルが維持できない
- 友人がいない
それぞれについて、実際に仙台に移住した私を例にして、説明していきます。
転職が困難
引っ越す場合は、仕事も新しく見つける必要があります。
よく地方都市は”支店経済”なんて言われます。地方都市には東京に本社を置く企業の支店が中心の経済のため、転職しようとしても現地採用の求人が少ないのです。
地方移住を難しくする一番の理由は、とにかくこの仕事の少なさなのです。
私の場合は、どこかの企業に就職するという選択肢は諦めて、ネットビジネスをやって自分でお金を稼ぐことを選択しました。
生活レベルが維持できない
あまり意識しないのですが、実は「生活レベルを落としたくない」という気持ちも、移住の大きな妨げになります。
一言で生活レベルと言っても、色んな項目があります。
例えばこういった類のことです。
- 収入額
- 仕事内容
- 生活環境
意外に大きいのが生活環境です。生活環境とは、お気に入りのお店とか、便利なサービス、娯楽施設などのことです。
東京の生活は忙しくて時間がありません。様々な事は自分でやるよりもお金を使って解決することが多くなります。
そうなると、食事を外食で済ませたり、服のクリーニングや掃除もお金でそういったサービスを購入することが多くなります。遊びに行くにしても、テーマパークやアミューズメント施設で、手っ取り早く済ませてしまうわけです。
このような便利な生活に慣れてしまうと、それらのサービスなしで生活することが難しく感じるようになります。
友人がいない
引っ越すんだから、知り合いがいなくなるのは、当たり前のように感じますが、実は地方から東京に出てくる人には、同じように上京して生活している同郷の友人が大勢いるのです。
一方で東京圏から地方に引っ越す人は、とても珍しいわけです。Uターンで故郷に帰る場合を除けば、地方移住すると一気に友人が減ってしまいます。
友人がいなくなることは、単純に寂しいですし、悩みを相談したり、いざという時に助けてくれる人がいないことは、とても心細い事です。
長年、付き合いのあった人間関係を失うことは、予想以上に抵抗があるものです。
ここで紹介した東京から出ることができない理由は、ほんの一部で実際にはもっとあるでしょう。確かに東京の生活は大変な部分もありますが、多くの人にとっては、無理してまで地方移住する必要性を感じないかもしれません。
しかし、実は日本全体のレベルで見てみると、そんなに呑気にしてられないほど、実は問題は深刻なのです!
次は人口のブラックホール状態を放っておくと迎える日本の結末を見ていきましょう。
このままいくと日本はどうなる?
このまま、東京が日本の人口を吸い込み続けるとどうなってしまうのでしょうか?
冒頭でも書いた通り、現在の日本の出生率は1.45です。この数字だけ見てもあまりピンとこないかもしれませんが、実はかなり深刻です。
こちらの記事にも書きましたが、出生率が1.41になると、孫の世代で人口が半分になってしまいます。
⇒ ゆとり世代の考えは正しい!仕事を頑張ると日本が滅ぶ理由!
1世代を25年とすると、出生率1.45というのは、僅か50年で日本の人口がほぼ半分になってしまう数字なのです。もちろん、全国で出生率が2.0を超えている道府県は無いので、東京だけが悪いわけではありません。
しかし、人口の減少は、労働力の減少や、地域のコミュニティの崩壊を招きます。経済を衰退させるだけでなく、健全な社会を維持することも難しくさせるのです。
ヨーロッパでは、人口減少の対策として、移民を受け入れる政策を取っている国もあります。
しかし、移民が雇用を奪ってしまうことや、文化の違い、差別などが原因で対立を生んだり、テロが増えるなど、新たな社会問題も発生しています。
私は人種差別には絶対反対ですし、「移民政策に反対だ!」なんて言いたいわけでもありません。しかし、異文化の人と一緒に健全な社会を作るのが難しいのも事実です。
このように人口のブラックホール問題を放っておくことは、日本社会を崩壊させかねない、深刻な問題を生むのです。
単に人口減少問題の対策として、移民を利用するなんて、都合の良い話で、外国の方にも失礼だと思います。
やはり、まずは私たち日本人自身が、知恵を絞って対策を考えていくのが大切です。では、私たちにはどのようなことができるのでしょうか?
次はその対策を考えてみます。
生活場所を変えやすくすることが重要!
東京圏への一極集中を改善するための、現在の政策を見ていると、地方に雇用を作ったり、地方を魅力的にしようとするものが多いように感じます。それは人が東京に出ていかないように、何とか地方に引き留める発想のように感じます。
しかし、もっと東京圏から地方に出ていきやすくするという発想を持つべきなのではないでしょうか?
「東京は人口のブラックホール」と言いますが、ブラックホールというのは、一度吸い込まれたら出ることができないことが特徴です。
だから、外に出ることができるホワイトホールを作るわけです(実際のブラックホールにはホワイトホールなんて無いらしいですが…)。
私が考えるホワイトホールとは、このようなものです。
- テレワーキングの推進
- 多様な働き方を広める
- ライフスタイルをダウンシフトする
具体的にはどのようなものなのか、順番に説明していきます!
テレワーキングの推進
通信技術は日進月歩で発達しています。
今の時代はパソコンとインターネットに接続できる環境があれば、どこでも仕事をすることが可能です。
チームで一緒に仕事をする場合でも、SkypeやGoogleハングアウト、ZOOMといったツールを使えば、ミーティングをしながら仕事をすることも問題ありません。
しかし実際は、テレワーキングの環境は整っているのに、なかなかそのような働き方は広まっていません。
結局は労務管理の問題や、成功事例が乏しいことなど、人間側が追い付いていないことが原因で広まってないように感じます。
そのような課題を乗り越えれば、テレワーキングによって、住む場所が限定されなくなり、東京から出ていくことを促すことができます。
多様な働き方を広める
現在の日本では、企業や団体に勤めている人の割合は、労働人口全体の88%になります。その中から経営者や会社役員を除いた、いわゆるサラリーマンでも80%にもなるのです。
今のところ、このような働き方の人は、住む場所を自由に選ぶことができません。
大企業の場合、大抵は大都市に本社や支社があるため、労働者がサラリーマン中心だと、どうしてもブラックホール化の原因になってしまいます。
そのため、サラリーマン以外の働き方を推進することも、必要ではないでしょうか?
インターネットビジネスや地方で独立起業することなどを助けて、働き方の多様性を広げることも、東京から出ていく助けになるはずです。
ライフスタイルをダウンシフトする
最後はちょっと角度を変えた考え方です。
東京から出ていくことができない理由に「生活レベルが維持できない」というものがありました。
しかし、考え方を変えて、生活レベルが落ちることを受け入れることで、豊かな生活ができるかもしれません。
消費型のライフスタイルを捨てて、多少の事は自分で済ませてしまえば、少ない収入でも生活することができるようになります。
このようにスローライフにダウンシフトすることができれば、地方移住への条件は軽くなるわけです。
ライフスタイルをダウンシフトすることについては、こちらの記事に詳しく書いているので、良ければご覧ください!
⇒ 資本主義経済の成長はもう限界!生き残るためにはナマケモノになれ!
まとめ
今の日本社会は、東京圏に一極集中することで、様々な問題を生んでいます。
しかし、実際にはできることなら東京以外で生活したいと考えている人は、結構多いのです。
東京が好きな人は、もちろん多いです。でも、実際に東京に住んでいる友人たちの中にも、早く東京を出たいと願う人がたくさんいました。
会社を辞める時には、同僚の多くは仙台に引っ越す私を羨ましいと言ってくれました。
そのような人たちに選択肢を提供することができれば、人口のブラックホールからの出口を作ってあげることができるはずです。
今回紹介した私が考える対策は次のようなものです。
- テレワーキングの推進
- 多様な働き方を広める
- ライフスタイルをダウンシフトする
遠隔地でも働けるような労務体形を確立して、成功事例を作っていく
サラリーマン以外の多様な働き方をしやすい社会にする
生活レベルを落とすことを受け入れて、消費型のライフスタイルを止める
これ以外にも、まだまだ対策はあるはずです。
東京圏で無理して生活することは、かえって日本を衰退させていくことにもなりかねません。
ちょっと大げさかもしれませんが、皆さんも将来の日本のために地方で生活してみませんか?