日本の労働者の労働時間は減少傾向にあるものの、相変わらず先進国の中でトップクラスです。

過重労働によって、心身の病気になる人は、長い間社会問題になっています。最近になっても、過労死する人や、自殺する人のことがニュースで取り上げられています。

どうして、日本からは、いつまでたっても過重労働が無くならないのでしょうか?

実は私も過重労働や業務のプレッシャーからくるストレスで、体を壊して仕事を辞めました。

私以外にも辞めていく同僚が多い職場でした。なんと辞めていく人の半分はストレスにより、心身の健康を崩したことが原因というほどの職場だったのです。

いったいなぜ、日本社会の労働時間は長いのでしょうか?

ここでは適正な労働時間はどれくらいなのかや、日本の労働時間が長い理由について、考えていきます。

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目次

適正な労働時間とは

私たちは社会で生活していく以上、何らかの仕事をして収入を得る必要があります。頑張って働かなければ豊かな生活はできません。だからと言って、私たちには働くことのできる限界というものがあります。

私たち人間にとって、ちょうど良い労働時間というものがあるはずです。では、私たちにとって適正な労働時間とはどれくらいなのでしょうか?

法律で決められている労働時間

日本では労働基準法という法律によって、労働者の労働時間が細かく定められています。

これによると労働者が1日に働いて良い時間は8時間までです。更に、週あたりの労働時間の合計も40時間以内にすることが定められています。

サラリーマンの人であれば多くの人は、毎週、月曜日~金曜日の9時~18時までの時間(休憩時間1時間を含む)を働いているのではないでしょうか?そうなるとこれだけで40時間ピッタリになります。法律ではこれ以上働いてはいけない事になっているです。

でも、実際には皆さん残業してますよね?残業しないで済む仕事なんて皆無なはずです。実はこの法律には例外があって「会社側と労働者側が合意の上で、労使協定を結べば、それ以上労働させても良い」とされているのです。

この規定は労働基準法第36条に書いてあるため、俗に「サブロク協定」と呼ばれています。

サブロク協定を結ぶと、例外的に労働時間の上限が増えます。具体的には次のようになります。

【サブロク協定で許される労働時間の上限】

期間 増えることが許される労働時間
1週間 15時間
2週間 27時間
1ヶ月 45時間
1年 360時間

しかし、これはあくまでも例外なのです!

このような内容から労働基準法の精神が見えてきます。それは「労働時間は1日8時間が限界です。どうしてもそれでは仕事が終わらない場合は仕方ないから例外を認めます。」というものです。

しかし、実際にはほぼ全ての会社は、サブロク協定を結んでこの例外的な働き方をしています。つまり日本の労働者は、ほぼ全員この例外的な働き方をしている異常な国なのです!

日本の会社は全てブラック企業!?

今やすっかり定着したブラック企業という言葉ですが、その定義は実は結構曖昧ですよね。

ブラック企業というと、長時間労働を強いる会社というイメージがあります。

では、どれくらいの労働時間になったらブラック企業といえるのでしょうか?

実は私も100時間を超えるような残業をしたことがあります。これはサブロク協定を結んでいても完全アウトの労働時間です。しかし、その時は上司も同僚も様々なサポートをしてくれました。何よりも自分自身が必要だと思ってやっていた仕事だったため、その会社をブラック企業だとは思ってません。

どんなに社員を大切にする素晴らしい会社であっても、忙しい時期というのは必ずあります。それらの会社が全てブラック企業というわけではないはずです。

そもそも、日本のほとんどの会社は、労働基準法が定める上限を超えた例外的な働き方をさせています。単に労働時間だけを基準にするなら、全ての会社がブラック企業といえるかもしれません…。

大切なのは、自分が納得してやりがいを感じ、自分の意思で仕事をできている範囲が、適正な労働時間であって、実際の労働時間はその次なのです。

このように適正な労働時間というのは労働基準法の基準を満たしているだけでなく、自分の意思に従って、適度に働けている時間ともいえると思います。

では、なぜ日本では自分の意思に反して、労働時間が長くなってしまうのでしょうか?

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日本の労働時間が長い理由

世界から見た日本人のイメージは「勤勉」というものです。戦後の日本は”東洋の奇跡“と言われるほどの発展を遂げましたが、それは日本企業に勤める労働者たちが団結し努力して働いて、世界との競争に打ち勝ったからです。

チームで目標を達成するために、時には残業や休日出勤などの長時間労働を当然のようにしてきました。

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しかし、現代になってその働き方では、昔のような成果が上がらなくなってきました。それにもかかわらず、なかなか労働時間が短くならない理由な何なのでしょうか?

主な理由は次の4つです。

  • 成果主義じゃない
  • 自分だけ早く帰れないという考え
  • 雇用の流動性が低い
  • 人手不足
  • 頑張っても成果が上がらない時代になった!


これら5つの理由に共通するのは、日本人全体の考えや制度が、日本社会の変化に追いつけていないことです。

それぞれ、順番に解説していきます!

成果主義じゃない

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1つ目は日本の労働者の賃金の金額の基準が、仕事の成果よりも、労働時間を重視していることです。

一般的な賃金体系の会社では、頑張って仕事で成果を出しても、ボーナスの金額が少し増えるくらいが関の山です。手っ取り早くもらえる給料を増やそうと思ったら、ダラダラ残業した方が良いわけです。

じゃあ、完全に成果主義にして、残業代を払わないようにすれば良いかと言うと、法律で残業代を払うことを義務付けているため、それは無理です。

成果主義にすれば、解決できるというわけでもないのです。

自分だけ早く帰れないという考え

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日本人の気質として、良くも悪くも和を大切にするというものがあります。

人と違う事をしたり、自分のスタイルを貫き通すようなことは、あまり好みません。そのため、同僚が残業していると、自分だけ早く帰宅できないと考えてしまうわけです。

また、あるアンケートで、長時間労働している人に対して、その理由を聞いたところ、管理職と一般社員の1位の理由は次のような物でした。

【管理職の1位の理由】
部下がまだ仕事をしているから

【一般社員の1位の理由】
上司がまだ仕事をしているから

これじゃあ、誰が最初に帰れるんでしょうか…?

雇用の流動性が低い

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「雇用の流動性」とは、平たく言えば、転職のしやすさのことです。

雇用の流動性を上げるための手っ取り早い方法は、労働者に与えられている権利を低くすることです。

日本の法律は労働者の権利を守ることを重視しているため、企業は社員を簡単に解雇できません。また、厚生年金などの納付金の一部も企業が肩代わりしています。

そのため、企業にとって労働者を雇う事は大変な事なので、他の国に比べると日本は気軽に新しい人を雇いにくいのです。実際に私の周りにも、転職にとても苦労している40代の友人たちが何人かいます。

転職が難しくなると、労働者側も簡単に仕事を辞めることができなくなります。そうなると、経営側や上司の無理難題も拒否し辛くなり、過重労働になってしまうのです。

つまり日本は「嫌なら今の会社をやめれば良い」というのが通用しない社会なのです。

人手不足

今の日本社会は慢性的な人手不足になっています。

この人手不足の原因には次の2つがあります。

  • 少子化による労働人口の減少
  • コスト削減のためのリストラ


現代社会では、どの企業も激しい競争にさらされています。競争に打ち勝つためには、コスト削減も必要になります。そうなると企業は人件費削減のために、社員数を減らします。その結果、一人当たりの労働時間は増えます

労働時間が増えることは、晩婚化や子育ての負担増などにつながり、更なる少子化につながってしまうのです。

頑張っても成果が上がらない時代になった!

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最近では、自分が望む範囲の労働時間でやりがいを感じながら成果を上げることが難しくなってきました。

労働時間が長くなる根本的な理由には、現代の日本は「頑張って長時間労働をすることでは、報われない社会になっているから」です。

戦後の高度経済成長期では、頑張って仕事をすれば給料が上がって出世することができました。日本社会自体が高い経済成長をしていたため、会社で長時間働くことで報われる時代だったのです。

しかし、今や世界経済の中心は東南アジアに移り、更に次に控えるのはアフリカです。そのような国々との厳しい競争の中で、日本は昔のような経済成長はできなくなっています。

このような中で日本は、長時間働いても、昔ほどの成果が得られないので、もっと長時間働いてしまうという、悪循環に陥っているのです!

長時間働けば豊かな人生を送れる時代は終わったのに、多くの人たちはそのことに気付いていないのです。

このような理由から日本の労働時間はどんどん長くなっていきます。そうなると、様々な害が出てくることになります。

長時間労働にはどのような害があるのでしょうか?

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労働時間が長いことの害

労働時間が長くなると、様々な害があるのは簡単に想像がつきますよね。

最近のニュースでは、ストレスによるうつ病患者の増加や、過重労働を苦にした自殺などをよく聞きます。

私が考える長時間労働の怖いところは、負のスパイラル陥ってどんどん長時間労働が悪化していくことです。

  1. ストレスや過労による体調悪化
  2. 生産性が低下する
  3. 生産性が悪くなり更に労働時間が増える
  4. 更なる過労や体調悪化を生み生産性が低下する


長時間労働はこの1~4を繰り返して、労働者をどんどん疲弊させる怖さがあります。

そして、疲弊してストレスが溜まると、様々な危険な病気の原因になってしまうことがあるのです。

では、労働時間を短くするには、どうすれば良いのでしょうか?

最後にその方法を見ていきましょう。

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労働時間を短くするには?

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過重労働というのは、長年の日本の社会問題です。そんな労働時間を短くするには、日本の働き方を成果主義にしたり、雇用の流動性を上げるために、企業が労働者を解雇しやすくしたりすることも一つの方法でしょう。

しかし、制度ばかり変えても、最後は日本人の意識が変わらなければ、難しいのではないでしょうか?

私はサラリーマンを辞めてから、長い日でも1日に6時間くらいしか仕事をしていません。それでも、問題無く生活できているにもかかわらず、なぜか「全然仕事してないけど、俺こんなんで大丈夫なんだろうか…?」と仕事をしていないことの後ろめたさを感じてしまうことがあります。

恐らく私以外の人でも、「長時間働くのが良い社会人の条件」と無意識のうちに考えている人が多いのではないでしょうか?

しかし、働き方を工夫すれば、私のように短い労働時間でも、生産性の高い仕事をすることが可能なのです!

とは言っても、人の意識を変えることは簡単ではありません。実際、今でも私は「もっと頑張って働いた方が良いんじゃないか」と思ってしまう時があります。

長時間働くことよりも、少ない時間で成果を上げることの方が良いことだという意識に日本の文化を少しずつ変えていくことが、一番大切だと思います。

まとめ

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今や日本は世界と激しい競争をしています。そんな中では、労働時間はどんどん長くなる一方です!

日本の労働時間が長い理由として考えられるのはこの5つです。

  • 成果主義じゃない
  • ダラダラ残業した方が、収入が増えるから

  • 自分だけ早く帰れないという考え
  • 良くも悪くもチームの和を大切にする民族性だから

  • 雇用の流動性が低い
  • 一度辞めると再就職が難しい社会のため、無理して働かざるを得ない

  • 人手不足
  • 余剰人員を抱えるリスクを減らすためのリストラと、そもそも少子化による労働人口の低下のため

  • 頑張っても成果が上がらない時代になった!
  • 厳しい世界との競争の中で、働いても十分な成果が得られない時代になっている


すぐに変えるのは難しいかもしれません。しかし、まずは自分の意識を変えることから始めて、少しでも働く時間を短くしてみてください

仕事は人生を豊かにするための手段であって、仕事が人生の目的ではありません!

皆さんが程よい労働時間で、良い仕事ができることを願っています!